古河市立上大野小学校 ×
ロイロノート・スクール

驚くほど発表が上手くなる!
朝学習時間を使って子どものプレゼン力育成術

ロイロノート・スクールを活用し、資料作成時間の短縮ながら分かりやすい構成や効果的な資料の提示方法を工夫し、回数を重ねるごとに論理的なプレゼンをできるようにします。

茨城県古河市立上大野小学校
薄井 直之教諭

実践の概要


毎日の朝の会で「プレゼンタイム」を設け、日直当番の児童2名が輪番制でスピーカーとなり、1分程度を目安にプレゼンを行います。1分プレゼン終了後に質問タイムを設けて聞き手の児童がプレゼン内容について質問や意見します。
まず、事前にくじ引きでプレゼンのテーマを決めてから、休み時間を中心に学校生活の「スキマ時間」を利用し、資料の準備をします。ロイロノートでテキストカードを用意したり、インターネットで情報を収集・活用します。また自分のプレゼンに必要となる写真を自分で撮影したり、表やグラフを作成する児童もいました。
発表では「内容の構成」・「話し方」・「ジェスチャー」などを意識して話をすすめます。聞き手の児童は、必要に応じてメモを取り話を聞きます。プレゼンの様子は後々のレビューの際に根拠となるようにするため、また発表者自身が自分のプレゼンをふり返ることができるように、担当の児童が動画で撮影をしました。
発表が終わると、内容に対して聞き手の児童が質問をし、双方向の意見交流をします。その後、プレゼンの質の向上を目的に担任がレビューを行い、改善点を助言します。
児童にプレゼンの視点が定着した段階で、発表後の質問に加えて「助言する」活動を加えることにより、「良いプレゼンとは何か?」を再確認することができ、児童のプレゼンの質が向上しました。
また、年間で1人につき12回プレゼンをする機会があるので助言された内容を次のプレゼンに活かし、徐々にスキルが向上していきます。

ロイロノート導入のメリット


  • 児童にとってもアプリの操作がとても簡単で使いやすく、Webカード・テキストカードを組み合わせることにより、容易にプレゼンテーションのスライドを準備することができました。また、発表中にカードに書き込むことや、拡大表示ができるため、効果的な資料提示ができました。
  • 他のアプリと併用ができるので、「Skitch」などで画像に注釈を加えた資料をロイロノート上で使用することができます。
  • 資料箱内の個人フォルダを活用することで、他の授業で作成したカードを使用することができるため、児童の負担が少なく、学校生活の「スキマ時間」で資料作成ができました。また資料箱を通して合理的に資料の蓄積ができるため、教科横断的に自分の思考を深めることができます。
  • プレゼンごとに児童が使用したカードを提出箱で回収することで、教師は学級全体の資料作成の傾向や、児童個人のスキルの向上を把握できました。

実践の目標


【話し手の児童】
聞き手の分かりやすさを意識してプレゼンの構成や資料の提示方法を工夫したり、主張の理由を明確にしたりすることで、論理的なプレゼンができるようになる。

【聞き手の児童】
プレゼンを聞く時に必要なポイントを助言し考えさせることで、児童の「聞く力」が向上する。また、このことにより、自分がスピーカーになった時に、より分かりやすいプレゼンができるようになる。

実践の場面


1. プレゼンテーマを決める

実践開始の当初は、プレゼンの準備構成がし易いように「好きな食べ物」などの簡単な共通テーマを設けた。
共通であることで児童のスキルが比較しやすい点もメリットである。実践を重ねながら、複数のテーマから話し手の児童が自分で選択をしたり、くじを引いて決めたりした。プレゼンが始まるまで、テーマが分からないため、聞き手の児童がプレゼンを楽しみにしていた。
また、聞き手の児童も「質問」をするために真剣に聞いていた。

2. プレゼンの構成を考える

プレゼンのテーマが決まった児童は、プレゼンの準備に取りかかる。テーマに合った話の構成を考え、必要となる資料を準備する。
資料の準備は、ロイロノートでテキストカードを用意したり、インターネットで情報を収集・活用したりする。児童によっては、自分のプレゼンに必要となる写真を自分で撮影したり、表やグラフを作成したりする子もいる。準備する時間は、休み時間を中心に学校生活の「スキマ時間」を利用している。

3. いざプレゼン!

プレゼンは日直当番の児童2名が行い、1分程度の発表を目安としている。スピーカーの児童は、「内容の構成」や「話し方」、「ジェスチャー」などを意識して話をすすめる。聞き手の児童は、必要に応じてメモを取りながら話を聞く。
プレゼンの様子は、後々のレビューの際に根拠となるようにするため、また発表者自身が自分のプレゼンをふり返ることができるようにするために、担当の児童が動画で撮影をしている。

4. 聞き手からの質問と回答

発表が終わると、内容に対して聞き手の児童が質問をする。聞き手の児童は、発表内容の中から、さらに詳しく聞きたいことについて質問をする。
話し手の児童は、質問に対して「分かりません」と答えないようにプレゼンを考えておく必要がある。
熟達した児童は、聞き手からの質問に即時返答したり、回答用のスライドを用意したりするなど、質問を予測している。聞き手の児童は、さらに話し手が予測していないだろう質問を考えている。

5. 担任からのレビュー

プレゼンを価値づけて、さらに次のプレゼンの質の向上を目的に担任がレビューを行う。
レビューの視点は、「内容構成」、「話し方」、「ジェスチャー」、「資料」と「質疑応答の内容」である。良かった点を褒めることを大切にし、改善点については「次はこうしよう」と具体的に指摘することを心がけている。スピーカーへのレビューを通して学級全体により良いプレゼンの実践するためのテクニックを周知することを目的とした。

6. 児童同士の相互助言

児童にプレゼンの視点が定着した段階で、発表後の質問に加えて「助言する」活動を加えた。プレゼンについて「内容構成」、「話し方」、「ジェスチャー」、「資料」について、聞き手が良かった点と改善点を伝えている。児童がレビューをすることで、「良いプレゼンとは何か?」を再確認することができる。改善点の指摘を受けないようにするために、自分の発表の前に友達に助言を求める児童もいて、プレゼンの質の向上が見られた。

インタビュー


表現や資料作成について意識させていることはありますか?

【表現について】

  • 一番は「楽しむ」ということです。「自分の考えが相手に伝わることが楽しい」と思えるように児童発表を繰り返してきました。学級全体がプレゼンを楽しめるようにプレゼン後の担任からのレビューでは、褒めることを大切にしました。ほめてほめて、最後に「こうするともっと良くなるよ」と改善点と解決法を具体的に伝えています。
  • 自分の考えを相手に伝えるためには、「相手を意識する」ことが大切です。自分が「言いたい話」を一方的に話すのではなく、聞き手が「聞きたい」、「知りたい」と思えるような内容を考え、話すことが大切だと伝えています。

【資料作成について】

  • 話の内容を「見える化」するために画像やテキストを用いて資料作成するよう意識させています。内容を効果的に伝える手段として補助的に資料の活用があると教えています。
  • グラフや表を用いた数字的根拠を示すことも意識させています。数値の推移やアンケートの調査、平均値など様々な数値を示し、自分の考えを付け加えることで説得力が増します。
  • 資料は「見栄え」も意識させています。テキストの文量は多すぎず少なすぎず、背景と文字の色のバランスなど、聞き手が見やすい資料作りを目指しました。

【話し方と構成について】

  • 話し方については声の大きさ、話す速度、声の抑揚や目線、ジェスチャーを加える事で、プレゼンの内容が伝わりやすくなると教えています。自分の用意した話や資料が、どのようにすれば聞き手に伝わりやすくなるのか考えて話す習慣を大切にしています。
  • プレゼンの指導では「原稿を暗記して読むだけの発表にしない」というルールを設けました。「まず、言いたいことは何か?」を考えさせて、ロイロノートのカードや付せん紙などにアウトプットをする活動を大切にして、言いたいことの集まりをもとにプレゼンを構成することにしました。「言いたいこと」がはっきりしていると、原稿を暗記しなくても堂々と話せます。
  • プレゼン全体の構成を考える際に、聞き手からの質問を予測し返答内容を考えてからプレゼンするよう意識させています。そうすることで自分が伝えたい内容を客観視して資料を推敲できます。また、聞き手側は、「ここは質問させたいところかな?」と発表者の意図を汲みながら聞く習慣が身につきました。

発表のあとに他の児童が質問や意見を活発に発表者にしていますが
意見を言い合える関係づくりはどのように構築されましたか?

プレゼンの方法は「みんな違って、みんないい」ということを大切にしています。担任からのレビューの際には、「声の強弱」、「見栄えのあるスライドの作り方」、「結論を先に言う話し方」、「結論を最後に言う話し方」など様々な話をしてきました。すべてを小学生が実践することはできないような量を伝えました。その目的は「効果的に伝える」ためです。各自が「効果的に伝える」ために、スライドを準備したり、話の構成を考えたり、リハーサルをして声の大きさや速さ、ジェスチャーの動きを確認したりしています。各自が効果的に伝えるために必要な技法を選択しています。

その準備の過程を経て発表すると、自然と「その子らしさ」が出てきます。一人ひとりのプレゼンには、「その子らしさ」の個性が詰まっています。その個性が現れた時には、大いに賞賛します。担任が、一人ひとりの個性が詰まったプレゼンを大切にしてきたことで、子どもたちも自然とプレゼンを尊重するようになります。

すると子どもたち同士の中で、「Aちゃんが前よりも堂々と話をするようになった」というプレゼン力の向上への賞賛の声や、「Bちゃんは内容がしっかりしているんだからもっと自信をもてばいいのに」という期待を込めた助言が目立つようになりました。プレゼンの中に個性が見られるようになり、それぞれの良さを生かした発表が増えました。「プレゼンが上手になりたい」という共通の目的をもっているため、互いの言葉が響き合うのだと思います。互いに高め合おうとする雰囲気によって、担任の予想を越えるプレゼンがたくさん生まれてきたのだと思います。


今回インタビューにご協力いただいた、薄井先生が勤務している古河市立上大野小学校のウェブページはこちらです。

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