実践事例中学校3年1人1台タブレット

社会(公民)

価格のはたらきと市場経済(経済分野)


松蔭中学校・高等学校
澤田 知之教諭

身近な商品の価格の変動要因を推理して原因の「仮説」を立てることで、市場価格の仕組みについて理解を深める授業を展開します。

最初に授業プリント(ワークシート)を配布し、授業のねらいを伝えます。また、今回は初めてロイロノート・スクールを使用するため、カードの作成や提出方法などの操作説明をします。
サービスや供給量が一定であるビジネスホテルの5月・8月の宿泊料金表を生徒に配信し、どういう日に価格が高くなる・安くなるのか推理して、ワークシートに記入させます。記入した内容を、ロイロノート・スクールでカードにして提出させます。次に、年間を通じて価格変動が大きいイチゴの月別平均価格を配信し、平均価格の変動要因を推理して自分の考えを提出させます。そして、ほとんど価格変動がないカップ麺の月別平均価格を配信します。先ほどのイチゴとの違いを明確にした上で、イチゴとカップ麺の価格変動に違いが出る原因を考えて、これまでと同様に自分の考えを提出させました。
最後に、これまでの取り組みでの推理をまとめて、何が原因で価格が変動するのかを生徒が自ら考え、「仮説」を立てました。「仮説」をワークシートに書き、ロイロノート・スクールで写真撮影し、カードを提出させました。次回の授業では、市場価格の仕組みの説明に生徒の「仮説」を引用するなど、本時の活動を活かした授業を行いました。


ロイロノート導入のメリット

  • 各生徒に資料を一斉配信できる点です。黒板に投影した資料をクラス全員で見る場合とは違い、生徒は手元で自分の見たい部分を自由に拡大できます。また、自分が注目したい部分について、自分が持った疑問に沿って比較ができました。
  • 各生徒の意見を瞬時に集約できる点です。また、全生徒に紹介したい特徴的な意見についてピックアップして紹介することも瞬時にできました。
  • 今回は初めてロイロノート・スクールを使用することもあり、操作に慣れるということも目標の一つでしたが、操作が非常に分かりやすいため、予想以上にスムーズに授業を進行することができました。
  • 提出されたカードや写真によって授業後に、自分の授業展開の反省をすることもでき、生徒のアウトプットを振り返ることも簡単にできました。

実践の目標

  • 身近な商品の価格の変動の原因を考え、自分なりの「仮説」を導く。
  • 間違いを恐れず、自分の意見を言語化し、教員に示す。
  • ロイロノート・スクールの基本的な機能である、資料の受け取り、カードの提出方法を身につける。

実践の場面

1. 本時のねらいを生徒に理解させる

授業プリント(ワークシート)を配布し、授業のねらい(目標)を生徒に伝える。また、ロイロノート・スクールというアプリを使用することも伝える。写真は授業プリントの「ねらい」の部分。
また、授業を行ったICT教室は完成したばかりであり、生徒は初めてこの教室を利用するため、授業の始まりから、前のめりであった。

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2. カードの作成方法・提出方法を理解する

ロイロノート・スクールのカードに自分の名前をテキスト入力し、提出箱に提出させる。カードの作成・提出方法の確認と同時に、通信が確立しているか確認する意味もある。初めて使用するのにも関わらず、多くの生徒がスムーズに実行できた。慣れていない生徒が戸惑う場面もあったが、席の近い生徒が自然と助け合った。

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3. 同じサービスでも、日によって価格が異なる原因を推理する

サービス・供給量が一定である、ビジネスホテルの5月・8月の宿泊料金表をロイロノート・スクールで各生徒に配信する。
どういう日に価格が高く、どういう日に価格が安いのか推理し、ワークシートに記入させた。ワークシートに記入した内容を、ロイロノート・スクールでカード化して、提出箱に提出させた。多くの生徒が「休みの日の前日が高い」としたが、一部の生徒は一般化して、「たくさんの人が利用したいと思う日は高い」とした。

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4. 月によって価格変動が大きい商品の原因を推理する

年間を通じて価格変動が大きいイチゴの月別平均価格を配信し、平均価格の変動要因を推理させた。自分の考えをワークシートに記入後、カードを提出させた。なかなか考えが進まない生徒がいたので、イチゴの旬の時期を紹介した。そのため、多くの生徒が旬の時期に価格が下がるという趣旨の内容を回答した。ロイロノート・スクールの使用方法にも慣れてきたため、カードにデコレーションも見られるようになった。

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5. 価格変動に差がある商品の比較から、原因を推理する

ほとんど価格変動がないカップ麺の月別平均価格を配信した。
場面4のイチゴとの違いを明確にした上で、イチゴとカップ麺の価格変動の違いの原因を推理させた。これまで同様に、ワークシートに記入した上で、カードを提出させた。カップ麺は天候や季節に左右されず年間を通じて供給される点に触れる生徒もいた。

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6. この授業での推理をまとめて「仮説」を立てる

実践の場面3~5までの取り組みをもとに、価格変動がどのようにしておこるのか、「仮説」を考え、ワークシートに記入する。
それをロイロノート・スクールで撮影し、カードとして提出させた。授業終了後、教員は各生徒が提出した仮説を確認して、次時に行う市場価格の仕組みの説明に生徒の仮説を引用するなど、授業計画に本時の取り組みを反映させた。

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