実践事例大学院生M12人1台タブレット

生徒指導・教育相談

スクールリーダーとして、組織的な生徒指導と根拠に基づいた適切な判断をしよう


金沢大学教職大学院
中島 卓二(現職院生)

ロイロノート・スクールを活用して、少年審判事例をもとに校種を超えた協働学習で個々の生徒指導スキルを伸ばします。

現職院生が輪番制で講師役を務める『教育相談の理論と実践(萱原道春教授)』の講義1コマで、「生徒指導と地域連携」というテーマで90分間を担当しました。
少年事件と更生保護の概論説明を行い、司法の視点から少年の処遇をペアグループで協議・検討します。まず、思考ツールを使って、自分が有する生徒指導スキルの現在地を確認します。
その後、少年犯罪と犯罪統制について講師が説明して、学校内における生徒指導との感覚的な差異についても各自で考察をしてもらいます。校種や経験を踏まえて指定したペアグループに別れ、架空の少年事件事案と家庭調査情報シートの情報をペアで読み解いて話し合います。そして、司法の視点から家裁審判と少年処遇の結果を予測します。その後、保護観察処分少年を受け入れる学校の教職員として、生徒理解の視点で再犯防止と犯罪・非行処遇に組織的にどう対応するかを再度ペアで協議し、代表者がそれぞれ全体での発表を行いました。


ロイロノート導入のメリット

  • 各グループが送信した1枚のカードが、一斉表示によってクリッカーの機能を果たすことで、ペアでの協議結果が即時に全体へフィードバックが可能となりました。
  • この重苦しい内容を紙媒体で実施するとしたら、とても90分間の長丁場は持たなかったでしょうし、タブレット端末によるペアでの話し合いが、前向きに思考を促す環境を整えてくれたと感じます。
  • 直感的な操作が可能であるため、初めて機器やアプリを使用した現職院生も、深い思考の妨げとならずに「道具」として活用できたと思います。

実践の目標

  • 「幼小中高特支」の各校種免許を持つ教員が、各々の専門的知識や経験、発達段階に応じた生徒理解力を発揮しながら協議し、根拠ある意見を持つことができる。
  • 一人の教員や学校単体で犯罪・非行等の事例を抱え込まず、同僚や地域社会、関係諸機関との協働や連携を深めることにより少年を指導・更生させていくプロセスを身につけることができる。
  • ロイロノート・スクールの利便性に触れることで、自身の授業での活用とその可能性を考えることができることができる。

実践の場面

1. 思考ツールで自分の現在地を確認する

講師が消極的生徒指導の弊害とチーム協働の意義についてスライドで説明した後、一つの少年事件事例を記したプリントを配布する。対応案を講じる“数”と“自信”の2軸で考え、自分が有する生徒指導スキルの現在地を確認することを目的とする。
黒板に示した思考ツール「座標軸」に、院生自身がネームプレートを貼り「視覚化」した。一人で完全な正解は常に提案できないのが常態であり、このため「自信がない」のゾーンに集中した。

2. 少年犯罪と犯罪統制について確認する

講師が主に刑法における違法性・有責性の有無、少年法第3条、少年事件のフローチャート等についてスライドで説明する。その上で、犯罪統制についての考え方では「類推の禁止」や「可罰的違法性」についても触れる。そして、学校内における生徒指導との感覚的な差異についても、生徒役である院生には各自で考察してもらう。

3. 審判と処遇についてペアで話し合い、意見を共有する

校種や経験を踏まえて指定したペアグループに、1台ずつタブレット端末を配布する。また、各グループに1枚ずつそれぞれ架空の異なる少年事件事案と家庭調査情報シートを紙で配布。ペアで情報を読み解いて話し合い、司法の視点から家裁審判と少年処遇の結果を予測する。①不処分、②保護観察処分、③児童養護施設・児童自立支援施設、④少年院の4つから選択した「処遇決定カード」1枚を教師側に送信する。

4. 学校としての支援・指導について協議する

保護観察処分、あるいは施設内処遇からの学校復帰となった段階で、更生保護の観点から学校として組織的に行うべき支援・指導について話し合う。教師として、学校として、ケアしておかなければならない事項を、「いつ・誰が・何を・何に・誰に・どうする」の5W1Hの要素をもとに、それぞれの事案ごとに具体的な対応策をペアで話し合った。

5. 協議結果をグループ発表し、共有する

ペアで話し合ったことは、講師が送信した「5W1Hカード」に記録する。先ほどの「処遇決定カード」とつなげてスライドを作成し、グループごとに提出する。全8グループが提出し終えた後は、1グループずつ全体でのプレゼン発表を行った。

6.「省察シート」で本時の学びを振り返る

本教職大学院において、講義終わりの10分間で必ず課される、A4用紙1枚分の「省察シート」に取り組み、本時の学びを振り返った。