実践事例高等学校1年1人1台タブレット

世界史B

産業革命の光と影 ~どのような影響があったか考えてみよう~


松蔭中学校・高等学校
古澤 美穂教諭

産業革命期の絵画の読み解きを通じて、当時の社会をイメージして時代を把握させ、生徒の興味・関心とつなげる授業を展開します。

産業革命について講義式の授業を受けた後、産業革命期の絵画からどのようなことが読み取れるかをグループで話し合い、絵にタイトルとキャプションをつけるというグループワークを行いました。
まず、各グループに風刺画などが描かれた絵のカードを配信します。配信した絵の資料は、18~19世紀の産業革命期のイギリス社会を描いたものであるという前提条件を確認させ、課題の趣旨説明と読み解きの例を掲示します。そして、グループごとに絵から何が読み取れるか話し合い、絵の特徴をカードに列挙します。また、絵の中で気になった箇所に手描きツールを用いて、印や説明を直接書き込みます。次に、列挙した特徴からどのようなタイトルがふさわしいかを話し合い、さらにキャプションについても考えます。
最後に、さまざまな書き込みをした絵のカード、特徴を列挙したカード、タイトルとキャプションを記入したカードの3枚をつなげて提出箱に提出します。提出したカードをホワイトボードに投影し、担当者が解説することで、本時の振り返りを行いました。


ロイロノート導入のメリット

  • 絵画資料などのデジタル画像は拡大することができるため、読み解きやすかったです。そのため、ロイロノート・スクールのさまざまな機能を使って特徴を書き込み、グループ内外で共有することができました。
  • 教師が絵を提示して解説するだけの従来のやり方に比べ、生徒たちははるかに積極的に、細部にいたるまで熱心に観察して、画像を拡大しながら議論を進めることができました。

実践の目標

  • 絵画の読み解きを通じ、産業革命が当時のイギリス社会に与えた影響について考えさせる。
  • 協同で読み解く作業を行うことで、事象の読み解きや解釈にさまざまな意見が出ることにも気づかせながら、当時の社会をイメージさせ、時代を把握させる。
  • 授業で学習してきたことと調べる内容をうまく結びつけることで、学習内容の深化を図る。

実践の場面

1. 講義(前時の続き)

1時間目の授業では、産業革命を経たイギリスが「世界の工場」と言われる工業大国に成長したことまでを解説した。
2時間目にあたるこの授業では、前時の復習をしたあと、産業資本家の誕生と資本主義体制の成立、労働者の誕生と労働問題の発生、労働運動の展開、そしてさまざまな社会問題が生まれたことを説明する。後半のグループワークへの影響を考え、社会問題については必要最小限の説明にとどめた。

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2. グループ分け・趣旨説明・絵の読み解きの例示

6名ずつの5つのグループに分け、風刺画など5枚の資料を各グループに割り当てる。各グループは、割り当てられた絵を見て特徴を列挙し、書記係がテキストカードにまとめる。それをもとに絵のタイトルとキャプションを作成する。
割り当てた絵画資料が18~19世紀の産業革命期のイギリス社会を描いたものであるという前提条件を確認させ、例として、テムズ川の汚濁を描いた風刺画(サイレント・ハイウェイ・マン「金が惜しいか、命が惜しいか?」『パンチ』1858年7月10日号掲載)と、担当者が考えたタイトルとキャプションを挙げる。

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3. グループワーク①(絵の読み解き)

グループ内の書記係を中心に、割り当てられた絵の特徴を列挙していく。また、割り当てられた絵の中で気になった箇所に、印や説明などを絵のカード上に自由に書き込む。

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4. グループワーク②(タイトルとキャプションの作成)

さまざまな意見を出し合い、列挙した絵の特徴をもとにタイトルとキャプションを考える。

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5. グループワーク③(カードをつなげて提出)

気になった箇所に書き込みをした絵のカードと、絵から読み取れたことを列挙したカード、タイトルとキャプションを書いたカードの3枚をつなげて提出する。

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6. 本時の振り返り

この授業では時間の関係上、発表の時間は設定しなかった。
その代わり、提出された3枚のカードを順に前方のホワイトボードに投影し、担当者が解説して本時の振り返りを行った。

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