実践事例大学4年1人1台タブレット(BYOD)

国語科教育実習(事後指導)

ICTを活用した国語の授業を構想する


成城大学
都築 則幸教諭

新しい国語の授業案を作成し、指導案に基づいた模擬授業を行う活動を通して、従来の授業方法の問題を解決するためのICTの効果的な活用方法を理解します。

次期学習指導要領ではICTを活用することによって、指導の効果を高めることが求められています。
しかし、国語の授業といえば、ICTを活用した授業を行っているケースは少なく、教育実習先でICTを活用した授業の指導を受けている学生もほとんどいない状況でした。そこで、教育実習の事後指導として、ICTの活用を前提とした授業の学習指導案を作成させ、その指導案に基づいた模擬授業を行うことにしました。
まず、『枕草子』の「春はあけぼの」という書き出しの枠組みを利用し、現在の季節感に照らし合わせたとき、どのような言葉がふさわしいのかを考えて作文にするという本時の内容を全体で確認します。
そして「春」をテーマとし、それにふさわしい言葉を個人で考え、ロイロノート・スクールのカードに書き込み、教師に提出します。その後、一覧表示で全体と共有し、さらに具体的な場面をイメージできる言葉を選んで作文につなげていきます。作成した作品は各グループの中で発表して感想を伝え合います。また、各グループから提出された作品は一覧表示で全体と共有した後、まとめとして本時の振り返りを行いました。


ロイロノート導入のメリット

  • スクリーンに学習のめあてを投影するなど、今までは板書に費やしていた時間を大幅に削減することができました。
  • 生徒の学習活動が停滞した際には、適宜必要となる資料を教師から提供することで、生徒の学びがスムーズになるよう促すことができました(国語便覧よりも、学習に適した資料を渡すことができます)。
  • 生徒が作成したものを一斉に見ることができるので、学習した内容を全体に共有することが今まで以上にしやすくなりました。
    また、共通した課題なども提出物を比較することで確認しやすくなり、問題を共有することに役立てることができました。

実践の目標

  • 教師側の視点から、従来の授業方法の問題を乗り越えられるようにロイロノート・スクールの効果的な活用方法について理解することができるようになる。
  • 生徒側の視点からロイロノート・スクールを活用するにあたり、問題となりうる点を把握し、その問題をどのように解決すべきか、具体的な方策を考えることができるようになる。
  • 生徒個々の学習活動に対して、適切な助言やサポートを行うことができるようになる。

実践の場面

1. 本時の学習課題を確認する

前時の授業『枕草子』の「春はあけぼの」について、その内容を振り返る。「春はあけぼの」という書き出しの枠組みを利用し、現在の季節感に照らし合わせたとき、どのような言葉がふさわしいのか各自考え、作文にすることが本時の学習課題であることを確認する。また、言葉を考える際、古文に出てきた言葉を利用してもよいし、現代の言葉でも構わないことを伝え、自由に表現させた。

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2.「春」をテーマとし、それにふさわしい言葉を考える

各個人で「春」に関連した言葉を考え、ロイロノート・スクールのカードに書き込んでいく。
言葉が思いつかない生徒に対しては、教師が『歳時記』などの資料を、ロイロノート・スクールを通じて配付した。手元に何もない状態では何を書いてよいのか不安になる生徒もいたが、こうした教師側の支援によって、全員が「春」のキーワードを書くことができた。

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3.「春」のキーワードを一覧表示し、全体で共有する

生徒はロイロノート・スクールを使って「春」のキーワードを教師に提出する。提出されたキーワードを一覧表示し、全体で「春」のイメージを共有する。様々な「春」を想起させる言葉が並ぶので、その中からさらに具体的な場面をイメージできる言葉を選び、作文につなげる。

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4. 現代版「春はあけぼの」を作る

「春は~」という書き出しにキーワードを入れ、その後の文を作成する。教師はロイロノート・スクールにて例文を提示し、書き方の一例を示す。作文は個々で行うが、作文に行き詰ったときに周囲に相談できるよう、グループを作っておく。他の生徒と相談せず、学習活動が停滞している生徒がいた場合には、教師の方から個別に声かけをして、学習活動を促すようにする。

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5. グループの中で各自の作品を発表する

作成した作品は各グループの中で発表し、感想を伝え合う。
感想を伝える際には、その内容のみならず、言葉の響きや文の構成などについても指摘できるよう注意する。そして、グループの中で一番良かった作品を選び、その作品を教師に提出する。発表が早く終わったグループに対しては、「夏」や「秋」など他の季節でも作品を作ってみるように促した。

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6. 本時の振り返りを行う

各グループから提出された作品を一覧表示し、全体で共有する。
共有した作品から現代風な言い回しや古文で見られる表現など、同じテーマであっても多様な表現方法があることに気づかせた。
また、『枕草子』と生徒の作品とを比較して、季節感の変容について指摘し、本時のまとめとした。

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