実践事例高等学校2年化学1人1台タブレット

電離平衡・塩の加水分解とpH

難易度の高い入試問題に対応するために、協働学習を利用して知識を共有しよう

難問にクラス全体で取り組み、知識を共有する『ファシリテーション型授業法』で、知識の定着を図ります。

「化学平衡」という単元の中の代表的なジャンルである「電離平衡」を扱います。
この単元は入試でも非常に多く取り上げられますが、その中でも一番理解しにくい「塩の加水分解とpH」がこの時間のテーマです。
生徒と共有しているファイルでまず簡単な解説を入れ、そのファイルを参考にして、問題をグループで解いていきます。生徒たちの進み具合を確認しながら、その時に応じて説明を入れます。
最終的には全員が解答したものを教師に送り、一覧表示で正誤状況を確認します。
代表的な解答方法や別解などを取り上げて、さらに解説を加えることで、問題解決方法のバリエーションを生徒が学習できるようにしました。

近畿大学附属高等学校・中学校
乾 武司教諭

ロイロノート導入のメリット

  • 今まで黒板で全体に対して行っていた解説を、生徒の端末上に配信することができるようになったため、生徒との距離が縮まり集中力が上がりました。
  • 生徒の解答作業も協働的な取り組みをさせることで、クラス全体での完全習得を目指せるようになってきました。
  • 生徒から返信された解答を一覧表示することで、思考方法や解答の多様性を感じることができるようになりました。そのため、別解に対する意識を共有することが容易になり、問題対応力も向上したように感じます。
  • 授業内容を最初から最後まで教師が全部解説してしまうのではなく、細かく生徒の進み具合を把握しながら、その都度解説を加えていくことで、生徒自ら考えて解答に近づいていくという体験を与えることができるようになりました。

実践の目標

高校の化学の中でも定着度の低い、「塩の加水分解とpH」の理論的な裏づけを理解した上で、入試問題レベルの内容を解答まで導くことのできる力を定着させる。
化学の得意な生徒が苦手な生徒に教えることで、クラス全員の完全習得を目指す。

実践の場面

1. 本時の目的と概略を説明する

この時間に解決したい問題のアウトラインと、理論的な概略説明をロイロノートの資料箱で生徒に共有する。生徒はタブレット上にそれを提示しながら、解説を加えていく。
前時までの授業を踏まえた上で、この時間に特に注意するべき項目のみをざっくり説明することで、説明し過ぎることに注意し、生徒自ら考える状況を作っていく。

2. グループでの問題解決と協働学習を行う

今まで学習してきたことと、この時間の理論的な概略説明を使って新しい問題に挑戦していく。
最小限しか説明を加えていないので、すんなり解ける生徒はほとんどいないが、今までに身につけた知識を利用して何か解法を見つけようと模索し始める。
隣の生徒と相談して、いろいろ試行錯誤しながら問題に取り組んだ。

3. 生徒の進み具合を確認しながら、追加説明を行う

生徒が行き詰まるであろう部分はあらかじめ予想できているので、そこをクリアするための追加情報を提供する。与える情報は極力少なくして、教えられたからできたという印象を持たさないように、自分で考えて解いたという感覚を大切にするよう指導していく。

4. 生徒の提出解答例を使って、問題の考え方を解説する

問題が解けた生徒から随時提出させ、解答内容をチェックする。
独創的な解答は出来るだけ取り上げて紹介するようにし、その意図や別解としての価値に関してコメントを加えて解説していく。
自分の解法以外の考え方や解き方を共有することで、思考方法の多様性を感じさせ、知識の幅を広げて実践対応力を養成することを意識させる。

5. 最終的な解答を解説する

自分たちが考えてきた思考方法と実際の解答例との比較を通じて、この問題の解き方の意味を感じ取らせる。
正解していた生徒はもちろん、間違っていた生徒も、自分の考え方のどこがずれていたのかを実感として捉えることができる。そのため、修正も容易であり、真の実力として定着する可能性が高まっていると考えられる。

6. 実際の解答までの計算処理と、個人的なフォローを行う

解き方の説明が全て終わった段階で、解答まで実際に手を動かし、計算して求めさせる。
その作業の中で、理解不十分な生徒や、発展的な疑問を持っている生徒に対してできる限りのフォローを行う。
また、今回使用した問題プリント・解説プリント・解答などは全てファイルとしてロイロノートで生徒に再度配信しておき、授業後自由に利用できるようにしておく。