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立命館守山中学校・高等学校
国語科の実践事例


立命館守山中学校・高等学校
犬飼 龍馬教諭

はじめに

中央教育審議会は平成20年に、学習指導要領の改訂に当たって充実すべき重要事項の第1として、言語活動の充実を挙げた。また文科省は国語科の言語活動について、「的確に理解し、論理的に思考して表現する能力、互いの立場や考えを尊重して伝え合う能力を育成することや、我が国の言語文化に触れて感性や情緒を育むことが重要である。そのためには、『話すこと・聞くこと』や『書くこと』、『読むこと』に関する基本的な国語の力を定着させていく。そして、言葉の美しさやリズムを体感させたりするとともに、発達の段階に応じて、記録、要約、説明、論述といった言語活動を行う能力を培う必要がある」と説明する。

これを受け、本校立命館守山では、特に「話すこと・聞くこと」及び「書くこと」の部分で、ロイロノートを使い、指導の充実を追求している。

今回はその事例を一部紹介し、最後に全ての事例に共通する鉄則のようなものをご提案する。



事例紹介

1.『平家物語』「敦盛の最期」
(中学2年担当 高岸 晃夫教諭)


① ロイロノート・スクール活用概要
『平家物語』を生徒が朗読し、それをロイロノートのカードに録音して教師に送る。
それを教師がチェックする。


② ロイロノート・スクール活用のメリット
声に出して教材を読むというのは、非常に有効な学習方法の一つではあるが、授業で一人一人当てて読むことは時間が限られているので、現実的ではない。しかしロイロノートを使って、一人一人録音すれば、チェックが可能である。これによって、歴史的仮名遣いの読みをチェックできる。

集団の前で声を出すのが苦手な生徒も、自宅で録音をするため、しっかりと声を出すことができる。

朗読を録音して残すことができるので、年度、教材ごとに蓄積でき、経年の比較が可能となる。その結果、本校の音声指導の足掛かりを作ることができる。


意味段落に分けて録音(40秒)くらい、二人一組で5分ほど練習してから録音
(写真:生徒が朗読を録音し、提出した画面)

2. 文法クイズ
(中学2年担当 南 英美教諭)


① ロイロノート・スクール活用概要
文法の問題をクイズ形式で提示し、全員で取り組む。そして教科書の練習問題を生徒が解き、解答をカメラで撮って教師にロイロノートで提出する。画面配信機能を使って、教師が生徒全員に画面を提示しながら採点する。


② ロイロノート・スクール活用のメリット
クイズ形式を採用することで、単調になりがちな文法の授業を活発に行うことができる。

クイズ形式を採用することで、全員が各問同じタイミングで解くことができ、中学生にありがちな、解答スピードの差から授業の雰囲気が崩れることを防ぐことができる。

クイズや教科書の練習問題の解答を、画面配信機能を使って教師が赤ペンで、リアルタイムに全員に提示することができるので、生徒の理解が深まる。

黒板に長々と文法の例文を書く必要がないので、スピードをもって、多くの問題に取り組むことができる。



クイズ問題

教科書の問題を解き、撮影する生徒

生徒の回答を教師が採点する様子

3. 白川静漢字学習
(中学1年担当 犬飼 龍馬教諭)


① ロイロノート・スクール活用概要
生徒が校内の漢字に関する展覧会に出かけ、その展覧会を説明するyoutubeをその場で視聴する。
課題に応じて展示物を撮影し、レポートを執筆。それをロイロノートで提出する。(反転学習)
その後、授業内で教師が古代文字やその元となったイラストを次々に提示し、生徒が逐一考察を提出する。生徒全員の考察を交流しながら、漢字の成り立ちからをクラスで考え、古代人の生活を推察する。授業で会得した知見をロイロノートで提出し、特に有用な生徒の考察を共有する。


② ロイロノート・スクール活用のメリット
生徒が撮影した展示物やレポートを印刷の手間なく、クラス全員に示し、配布することができる。

考察のきっかけとなる古代文字やイラストは授業の展開にあわせて「画面配信」で生徒に見せたり、「送信」で生徒が個人のタイミングで見られるようにできる。

発言では単発の感覚的な考察に終わる生徒のアウトプットを、明確な文字情報として発信することができ、生徒の考察を深く、明確に共有できる。



展覧会を説明するyoutubeの動画

展覧会に赴き、動画を見て、
写真を撮る生徒と古代文字

ロイロノートで提示された古代文字や
イラストから漢字の成り立ちを考察する生徒

全ての事例に共通する鉄則

(1) 生徒提出物の臨機応変な利用をする
ある生徒の解答やレポートを全生徒に見せたいとき、これまでは印刷するしかなかった。
しかしロイロノートを使えば、印刷の必要がない。印刷の必要がないということは、手間がかからないということの他に、印刷をしていないものを即時、全生徒に見せられるということである。
教師が、生徒の理解や関心を授業前に全て予測することは不可能である。授業が始まってから生徒の発言を受けて、初めて生徒の理解や関心を知ることができる。それに合わせて、共有すべき生徒の解答やレポートをリアルタイムに選び、全生徒に提示するのが効果のある学習だ。だが、紙に印刷する方式では授業時間内に間に合わない。授業が終わってから印刷して次の授業に配布するのでは、リアルタイムとは言い難く、生徒の理解や関心は薄れてしまう。
しかし、ロイロノートではそれが可能なのだ。生徒の発言に合わせて、生徒の解答や朗読、またはレポートを選び、すぐに全生徒に提示できるのである。しかもそれは、ある程度の時間をかけて作られたものであるから、生徒自身の一定の検討を経た明確な発信物である。その発信物が生徒相互の学習をより深めるのだ。

(2) 文字情報に対する添削を重視する
ペーパーテストの結果を生徒が受け取るとき、生徒が気にするのは正解・不正解の数や点数だろう。
しかし、生徒にとって本当に重要なのは、なぜその問題を間違えたかということである。しかし返却されたペーパーテストには冷酷に×がついているだけで、なぜそれが間違いなのかは語ってくれない。
ロイロノートは、生徒の解答を手書きの赤ペンで、全生徒の前で添削できる。この具体的で明確でリアルタイムな添削作業を生徒が見ることで、生徒はなぜ自分が間違ったか理解することができる。
このように、教師は文字情報に対する添削を全生徒の前で見せることを重視している。



最後に

ロイロノートは、国語科による実践がまだまだ少ないように思う。しかしロイロノートは生徒の発話を録音して「話すこと」をカバーできる。 また、その録音を教室で流して共有することで、「聞くこと」もカバーできる。そして、生徒が自分の考察を書き、それを提出して教師が添削することで「書くこと」を重厚にカバーできる。
さらに、ウェブ情報やテキスト、「生徒間共有」の機能で、生徒の情報検索や考察の個人的な共有をサポートできるため、「読むこと」も補うことができる。
私たちはこれからもこのロイロノートで「学び」の再定義にチャレンジをしていく。
そして共に進む仲間を強く求めている。