実践事例 > 高等学校1年 > 情報 > 1人1台タブレット

情報社会における法と個人の責任

知識構成型ジグソー法を用いた実際の著作権の考え方や捉え方

ロイロノートによって、容易に意見が共有でき、円滑に話し合える知識構成型のジグソー法を実現

授業の本題に入る前、「あなたの作ったキャラクターで利益を得るには?」という課題を与え、4つの選択肢から選んで教師に提出します。その後、グループ分けをして、エキスパート活動のA~Cをそれぞれ分担して行っていきました。
Aは、無断転載により著作権が侵害されているということについて学び合います。
Bは、模倣や二次創作、オマージュ作品がどこまで許されるかといった内容を学び合います。
Cは、ライセンス料を無料にしたことが成功し、売上向上に繋がったという内容を学び合います。
それぞれの活動を通して学んだことを定着させるため、新しくグループを作り、エキスパート活動で学んだことを1人ずつ発表し合います。最後に、各グループの意見を聞いた上で、事前課題と全く同じ内容を提示し、自分の意見をカードに書いて提出してもらいました。



関西創価高等学校
辻 誠一教諭
教材出典:東京大学 CoREF 「知識構成型ジグソー法」http://coref.u-tokyo.ac.jp/
この実践は、埼玉県立不動岡高等学校・坪井啓明教諭の 平成25年度の実践を参考にしたものです。


ロイロノート導入のメリット

・今回の様な授業の際、紙の資料で行うと、移動などが伴うため、たまに破れたり、提出忘れなどが激しかった。それを防ぐためにいちいち教師が生徒のもとに行き、回収するというのはとても面倒な事でした。
ですが、ロイロノートの導入により、移動の際もタブレットとタッチペンだけ持てば良くなり、提出状況も良くなりました。

・生徒に提出を促すことも簡単になり、かつ、教師の手もほとんど煩わせることもなくなりました。教師にも生徒にも良いことが多いです。

・使い方が容易なため、話し合いの方に集中でき、より内容の充実した話し合いを行うことができました。生徒の思考の変遷も明確に短時間で分かるので、評価がしやすくなりました。


実践の目標

・事前に著作権全般について学んだ上で、知識構成型ジグソー法を用いて、実例からさまざまな著作権の考え方や捉え方を学ぶ。生徒自作問題をみんなで解くことにより、楽しんで応用問題に取り組む。

・実際に自分が著作物を作った時にはどのように著作権を行使するべきかを考え、行動していくことができるように学びを深める。



実践の場面

1. 事前課題を行う

授業の本題に入る前、「あなたの作ったキャラクターで利益を得るには?」という課題を行う。この課題の具体的な内容は以下の通りだ。
<課題内容>
自分は漫画家志望で、独自のキャラクターを書き上げたという想定で、この作品を世に広め、お金儲けをしたいと考えた時に以下の4つの内のどれを選択するか?
①著作権をガチガチに主張
②ある程度の二次創作は許す
③ライセンスフリー
④その他
選択肢の中から自分の考えを選び、ロイロノートのカードに番号と、理由を書いて提出してもらった。
①は赤色のカード、②は黄、③は緑、④は青というように、選択肢ごとに背景色を変えることを指示したので、生徒の解答を一覧表示する際、どの意見が一番多いのかすぐに把握することができた。また、理由を記入することで、当初の意見をすぐに聞き出すこともできた。



2. エキスパート活動を行う(エキスパート活動A)

グループ分けをして、エキスパート活動のA~Cをそれぞれ分担して行った。まずAの活動は、「ONE PIECE」の違法投稿を例として、無断転載により著作権が侵害されているという内容を学び合った。被害額が19億円にも上った例も見ながら、「著作権侵害は悪いことだ」という感覚になるような内容を学んでいった。
エキスパート活動の資料は、ロイロノートの資料箱からPDFになっているデータをそれぞれ取ってくる形にし、手書き機能で文字などを記入してもらった。



3. エキスパート活動を行う(エキスパート活動B)

Bを担当するグループは、ドラえもんの「最終話」と称する物語を無断で漫画化、出版した問題を例に、模倣や二次創作、オマージュ作品がどこまで許されるかといった内容を学び合った。同人誌レベルでは現在も大目に見ている現状がある中、模倣を全く許さなくなれば、新しい才能の芽を摘む可能性もあるといったことを学びながら、話し合いをしていった。この話し合いの内容が、後の活動に繋がっていく。資料は、Aのグループと同じく、資料箱から取り出してもらった。



4. エキスパート活動を行う(エキスパート活動C)

Cを担当するグループは、くまモンの経済効果を例にして、ライセンス料を無料にしたことが成功し、売上500億円の試算になったという内容を学び合った。他のゆるキャラとは違い、熊本県をPRする目的なら、利用料無しで利用許可が下りる。まさに「ウィンウィンの関係」となることを学び、「著作権をふりかざして利用させないことは、正しい判断なのか?」という疑問を生じさせる内容になっている。資料はA、Bのグループと同じく、資料箱から取り出してもらった。



5. ジグソー活動1(エキスパート活動の発表をし合う)

エキスパート活動を終了し、記入した資料を教師に提出させ、他のグループの意見を聞くためのジグソー活動を行っていった。エキスパート活動の、それぞれの内容を学んだメンバーを、最低1名含む1組3名程度のグループを作り、そのグループごとに集まった。該当の組でA、B、Cの内容を学んだ人は1人だけ(場合によっては2人)という状態で、エキスパート活動で学んだことを1人3分程度で発表し合う。
内容をまとめる資料は、教師から生徒に一斉配布し、発表だけでなく、他の活動の内容を聞いて、自分の活動内容をまとめさせた。
自分のエキスパート活動をしっかり理解していないと、発表ができず、迷惑をかけてしまう。
エキスパート活動後に、ジグソー活動を行うことで、エキスパート活動に責任を持って取り組ませることができる。



6. ジグソー活動2(事後課題を行う)

各グループの意見を聞いた上で、事後課題として、「あなたの作ったキャラクターで利益を得るには?」という事前課題と全く同じ内容を提示した。選択肢に○をつけて理由を書き、著作者の立場から利用者に行ってほしいこと、行ってほしくないことも記入する。
その際、ジグソー活動をしたメンバーと、自分の意見を述べながら自由に話し合いを行っても良いことにした。
最後にジグソー活動1で作成した資料と共に、教師に提出。自分なりの意見を持てているか、正確に意図を理解し、その上で判断しているかなどを、提出物を通してチェックした。