定期考査で全校英語スピーキングテスト


英語科教員の夢である全校英語スピーキングテストは
どのように実現されたのか!?

佼成学園中学校・高等学校

昨今、2020年の小学校での英語教科化、全国学力調査での4技能導入、大学入試共通テストでのTOEFL等の民間テスト活用検討など、従来のリーディング、リスニングの2技能にライティング、スピーキングを加えた4技能の習得が重要視されるようになってきています。しかし、スピーキングは他の3技能に比べて試験の実施が難しく、成績評価もまた困難とされてきました。

佼成学園中学校・高等学校では2016年度に一部のクラスでロイロノート・スクールを使ったスピーキングテストを始め、今年度は中学1年生から高校3年生の全校生徒に対して行っています。英語科教員の夢ともいえる、英語スピーキングテストをどのように行っているのか、佼成学園中学校・高等学校 簗瀬(やなせ)先生にインタビューしました。

実践の概要


ロイロノート・スクールの送る機能を使って、問題が書かれたカードを教員から生徒に共有します。生徒はカードに書いてある設定にしたがって、決められた時間内に音声を録音し、提出します。
イヤホンマイクを使うことで、全生徒が一斉に話しても、一人ひとりの音声をクリアに録音することができます。教員は提出された音声をもとに、採点を行い、定期考査の評価点の一部に加えます。

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高校3年生でのテストの様子。担当はスピーキングテスト実施の中心メンバーである井上先生。
問題の配信、音声の録音、録音した音声の回収をすべてロイロノート・スクールで行うことができる。

Question 1

スピーキングテストを実施しようと思ったきっかけは何ですか?


音声ファイルを手軽に扱えるロイロノート・スクールを使えば、試験の実施や評価が難しかったスピーキングテストのハードルをクリアできるのではないかと考えました。

これまでのスピーキングテストは、生徒一人ひとり対面で行っていたため、非常に時間がかかっていました。そのため、スピーキングは授業内での活動のひとつにとどまり、各考査ごとの評価につなげることが難しい状況でした。

そんな中、ある授業でロイロノート・スクールで英語の音読を自撮りさせて提出させてみたところ、音声がとてもクリアだったため、これは非常に応用範囲が広く、スピーキングテストでも十分活用できるのではないかと考えました。ロイロノート・スクールを使えば、生徒が同時に音声を録音・提出できるだけでなく、スピーキングテストの実施時間を大幅に短縮することができます。また、録音した音声を繰り返し聞くことができるため、成績評価も正確に行えます。

スピーキングテストを実施するのに必要な条件は、問題の配信から録音音声の回収までをスムーズに行えることです。ロイロノート・スクールならそれらをすべて満たすことができるので、英語科教員全員が全校でのスピーキングテスト実施を決断しました。


Question 2

どのような形式のスピーキングテストを実施されていますか?


中学1年生から高校3年生まで、段階に応じてさまざまなテストを行っています。

本校におけるスピーキングテストの取り組みは、自作のスピーチ暗唱など事前準備が必要な“prepared”と、英語で質問された内容についてその場で英語で答えるなど、即興性の高い“impromptu”の2つに大別されます。

中学生では、与えられた文章の音読や、事前に準備しておいたスピーチ暗唱といった“prerared”の活動が中心になりますが、学年が上がるにつれて、即時性を重視し、“impromptu”が増えていきます。「話すこと[やり取り][発表]」を重視し、4技能5領域の養成を意識したスピーキングテストに取り組んでいます。

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英語で聞いた内容に対し、即座に英語で答える高校3年生のテストの様子。

Question 3

スピーキングテストを取り入れてみて、どのような成果がありましたか?


スピーキングを通して、他の3技能についても総合的に伸ばすことができるようになりました。

スピーキングテストを通して、発音、文節の区切り方などのスピーキング能力だけではなく、リスニング、リーディング、ライティングの3技能を総合的に評価することができるようになりました。

例えば、事前に準備したスピーチを読み上げる形式のテストでは、生徒は自分で原稿を作成するため、ライティング技術が必要です。文章を仕上げる際には、まだ授業では扱っていない文法事項や構文形式を自分で調べて表現する生徒もいます。また、英語で聞いた内容に英語で答える形式のテストでは、正しく英文の内容を聞き取るリスニング能力が必要ですし、問題文にパッセージを含めれば、リーディング能力も必要とされます。

このように、生徒たちは4技能をすべてを使って、スピーキングテストに取り組みます。ひとつの取り組みで、4技能すべてを活用させることにより、英語の各技能を総合的に伸ばせることがこの取り組みの大きな利点です。

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英語の長文に対する答えを英語で答えるスピーキングテストでは、リーディング能力も求められる。

Question 4

スピーキングテストを実施するうえで、注意することはありますか?


事前に練習を行うことと、定期考査としての「ルール」の明確化が必要です。

7月の1学期末考査では、6月にタブレットを導入したばかりの中学1年生でもスピーキングテストを実施しました。英語の授業でロイロノート・スクールを使って、事前にスピーキングテストの練習を行っていたので、初めての期末考査でも問題なくスピーキングテストを実施することができました。

また、全員が一斉に声を出すスピーキングテストは、通常の定期考査に比べて生徒の緊張感や集中力が薄れがちです。テストの前に必ず、スピーキングテスト実施の「ルール」を明確に伝え、「定期考査である」という緊張感を作り出します。そうすることで、集中した状態でテストを受ける環境を整えていていきます。

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井上先生作のスピーキングテスト実施のルール。事前に提示することで、試験の緊張感と集中力を保つ。

Question 5

採点はどのように行われるのですか?


発音や発表内容など、評価基準を統一したルーブリックで採点を行います。

採点は、「発音」「正しい場所で区切って読めているか」など、テストごとに評価項目を統一して行います。提出された音声を聞き、ルーブリックに照らし合わせ、それぞれの項目ごとに点数をつけた合計点で評価します。スピーキングテストの内容によっては、書かれたスピーチの内容がどうか、文法上の誤りがない表現になっているか、正しい受け答えができているかなど、スピーキング以外の能力が評価の対象になることもあります。対面の場合と違って、その場で評価をつける必要がなく、何度も録音データを聞き返すことができるので、評価に妥当性をもたせることができます。

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生徒から提出された録音データを評価項目ごとに採点し、採点結果をPCに入力する。