実践事例高等学校2年1人1台タブレット

数学

積分法 ―いろいろなグラフと面積の和―


東海大学付属大阪仰星高等学校
阿部 守勝教諭

授業時間内における生徒の活動時間の最大化を追求した授業形態 〜反転授業で深まる学びの質〜

私の授業では、生徒の活動時間(グループ・個別の演習)を最大化することと、協働での学びを重視していることから、反転学習を取り入れています。家庭学習(動画視聴)を経た後の授業では、従来の授業と同様、教科書に沿って進行し、ワークシートでの演習(教科書の問題を掲載)に取り組みます。
本授業は、家庭学習で視聴した動画についての内容確認からはじまり、提示された題についての解答精査、ワークシートの完成、まとめテスト、リフレクションの流れで進めます。最後に、本時の復習問題を配付しますが、どの問題をいくつやるかは、生徒の裁量に任せています。


ロイロノート導入のメリット

  • 家庭学習から授業まで、一連の学習活動がロイロノート・スクールのクラウドサーバーに保存されることにより、教員の管理が楽になり、生徒の教材整理がしやすくなりました。
  • 学習の持ち運びが可能になり、隙間時間の有効活用にもつながっています。
  • 学習活動を時系列に沿って記録できるため、ポートフォリオとしても活用できます。
  • 生徒の躓きを長い時間放置することなく、早期に見つけることができるなど、よりアダプティブな学習を時間差なく個々に対して行うことができます。

実践の目標

生徒一人ひとりの満足度に加え、学習内容の定着を授業運営の目指すところとしています。
そのためには、生徒が主体となって学習に取り組む場面や思考する時間を確保することが重要であると考えます。そうした授業を実現するために、反転授業を取り入れたり、授業に対する生徒の声をポートフォリオ等で確かめたりしながら、よりよい学習スタイルを追求しています。
授業の中では、授業時間の50分を数学のみに集中させることや、学習した内容を生徒自身が確実にアウトプットできるようにすることを心がけています。

実践の場面

1. 家庭学習(動画視聴)で授業の予習を行う

授業前日までに授業で扱う内容の解説動画をロイロノート・スクールで生徒に配信する。動画では、翌日の授業内容に関する新しい概念や例題について取り上げる。生徒はこの動画を視聴した上で授業に臨む。
事前視聴の有無により、授業中のパフォーマンスに大きな差が生じるが、反転学習を経験した生徒からは、「授業時間内に自分で考える時間が増えた」「授業時間の使い方や学習への取り組みに変化を感じる」といった感想が多数あり、その効果が生徒に実感をもって受け入れられていることがうかがえる。

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2. 概要説明(5分)、内容理解のための解答精査(15分)

事前に配信した動画の内容を簡単に振り返った後、学習内容の理解を確かなものとするために解答精査を行う。この活動では、教員から送られた「間違いを含んだ解答カード」(以下、「トラップ有」)を用いて、各自あるいはグループで解答内容を精査する。10ヶ所前後のチェック箇所について、正しければ○を、そうでない場合には×をそれぞれつけて、カードを提出する。これにより、単に模範解答を示す場合と比べ、解答(正しい解釈)を読み流すことが少なくなり、慎重に答案を吟味することができる。

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3. 解法の間違い修正(15分)

前段階で用いた「トラップ有」のカードをもとに、各自あるいはグループで紙のワークシートに正しい解答を作成する。“×”のついた箇所は、正しい式や記述に直しながら改めて一通りの内容を書く。このステップを設けることで、授業内で同じ問題に2度取り組むことができ、学習内容の定着をはかることができる。

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4. まとめテスト(解答5分+自己採点5分)

学習活動の定着や整理を目的とした、本時のまとめテストを行う。この時のルールとして、他生徒の答案を見ることや話し合いをNGとする一方で、何を見ながら解いても良いこととしている。また、テストの内容については、ひねりのない基本問題を主としているが、これは授業時間中、高い集中力をもって学習内容にあたらせることと、生徒自身が確実にアウトプットできることに焦点をおいているためである。

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5. 振り返り(5分)

リフレクションカード(紙)で数値評価、他社のe-ポートフォリオで学習活動の振り返りを行う。リフレクションカードでは、個人の活動やグループでの活動について、いくつかの項目を設け5段階で自己評価をする。ポートフォリオには、テンプレートを利用し、本時のポイントと興味を持ったこと、疑問に思ったことなど、それぞれに理由を添えて文章化する。

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6. 宿題(復習)を提示する

ワークシート裏面の問題演習「その日の復習その日のうちに~これだけはやってちょうだい!」を行い、取り組んだ記録を写真に撮ってロイロノート・スクールで提出する。
ただし、宿題の扱いについては、理解度や必要性を生徒自身で客観的に判断し、全問を解く/偶(奇)数番だけやる/適当に1問だけ解く/全くやらない、のように生徒個人の裁量に任せるスタイルをとっている。なお、全くやらない場合でも、カードに「完全理解、宿題不要」のように書いて意思表示をするよう促している。

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