パフォーマンス課題における自己評価・他者評価の取り組み

海洋における生物多様性や、プラスチックごみ問題について考えるパフォーマンス課題を行った。
自然事象において解決すべき課題に遭遇したとき、理科の見方・考え方を働かせて原因となる要素に気付き、現状をよりよくするための方策が立てられることをめざした。
科学的な探究のプロセスにおいて、適した観察や実験の技能を定着できるよう、ルーブリックにもとづいて個人やグループで成果を評価し合い、進捗状況を即時的に共有して振り返りを行う活動を行った。ここでは、自己評価、相互評価の場面を抜粋して紹介する。
生徒は課題の本質を自分事としてとらえ、見通しをもって粘り強く取り組むことができた。


ロイロノート・スクール導入のメリット

  • ロイロノート・スクールで自己評価・相互評価を行うことによって、評価の蓄積が容易にできました。
  • 画面上に思考のプロセスを保存・共有できるため、生徒が学習方略を獲得する手立てとして大変価値があると感じました。

実践の目標

  • パフォーマンス課題における生徒の振り返り(自己評価・相互評価)を主体的・共創的に進めることができる。

実践の場面

1. パフォーマンス課題を提示する

【パフォーマンス課題】
「2050年には、海の魚の量とプラスチックごみの量が同じになると言われている。現在、世界で海洋のごみ問題に関する対応が話し合われている。しかし、プラスチックは便利なため、使用禁止という選択は難しいだろう。これについて、海洋ごみ問題の解決に向け、あなたたちが考える具体的な方策について科学的な根拠を示し、他の人に分かりやすく説明しなさい。」

課題の設定にあたっては、「パフォーマンス評価のためのGRASPS(Wiggins & McTighe(2005))」を参考

2. 単元におけるルーブリックを作成する

本単元におけるルーブリックを作成し、パフォーマンス課題に対する意欲を高めた。
評価の視点に、「習得した知識の活用」「観察・実験の技能」「データの整理」を設定した。それぞれの視点におけるA評価の規準のみ教師から提示し、B評価とS評価は生徒自身が作成した。評価規準のアイディアをロイロノート・スクールに提出し、全員で共有しながらルーブリックを完成させた。

3. 方策の根拠となる実験を行う

グループで課題に対する方策を考える中で、自分たちの方策を裏付ける観察や実験を行った。個人・グループの多様な試行錯誤の中から解決すべき課題等を発見し、根拠となる記録をロイロノート・スクールに蓄積した。

4. グループの方策となる根拠を全体で共有する

グループで観察・実験した結果や、方策立案のプロセスを全体に共有し、他者の考えと比較、検討した。また、遠隔で参加してもらったマイクロプラスチックに関する研究者(水川薫子:東京農工大学 農学研究院物質循環環境科学部門 助教)から適確な助言をいただいた。これにより次時以降、更に必要な調査活動や実験を行うための見通しをもつことができた。

5. 実験結果と本時の学びを動画にまとめる

毎時間の学びや観察・実験結果の写真や動画をまとめ、各自で1分程度のショートムービーを作成、共有した。次時以降、これらの動画を用いて、グループで考えた方策をプレゼンする。

6. 自己評価、相互評価を行う

生徒は、毎時間の振り返りをロイロノート・スクールに蓄積し、いつでも閲覧できるようにしている。自己評価・相互評価は、ルーブリックにもとづいて、カードの色を変えてコメントを記入した(S:ピンク、A:白、B:ブルー)。
グループ内だけでなく、グループを越えて協働して観察・実験等を行ったメンバーにもカードを送りあって相互評価を行った。即時的なフィードバックが可能となることで、生徒はその都度、目標を設定し直したり、実験手段を修正したりすることができた。